税務調査が、
本年は
ありませんように。
吉住貴子
篠原真寿美
[奈良市 春日大社]
税務調査が
無事に
終了します様に。
2012年1月9日
篠原真寿美
[奈良市 春日大社]
2枚の絵馬は、汚れ具合から見て同じ年に奉納されたものであろう。
天下の春日大社が、1年前の奉納絵馬を放置しておく、ということも考えられないから、この推定に間違いはないはずだ。
で、筆者が思うに、吉住貴子クンと篠原真寿美クンは、どこかあまり大手ではない企業の経理事務を担当しているようである。
家族経営の弱小企業に勤務している、ということはないだろう。従業員百数十人程度の企業かも知れない(何の根拠もないいい加減な憶測だが)。
で、その企業が巨額の脱税をしているとか、経理に意図的な不正処理があるとかいった話でもなかろう。
要するに、毎年の税務申告の時期になって、プロではない(プロなら、こんな願掛けをするほど悩むまい)二人にとっては、またうっとうしい、時間ばかりかかる税務事務の季節が来たのである。
常日頃から、いい加減な伝票ばかり回してくる営業連中の後始末、あるいは、巨悪ではないものの結構曖昧な経費の使い方をしている社長の尻拭いというか、帳尻合わせをしなければならないのである。
顧問契約を結んでいる税理士事務所のセンセーも事務員も、顧問料を値切っているせいか、あまり協力的ではない…、のだろう。
で、去年はそれで税務調査がはいってひどい目に遭ったのだ。貴子クンと真寿美クンは、藁にもすがる思いで春日大社の神様にお願いに来たのである。
「本年は」という、限定の意味を持つ助詞を使っているところに、その心情が表れている。それはいいのだが…。
筆者は会社関係の税務調査というのが、一年のうちのいつ頃実施されるのか、よく知らない。
しかし、筆者がおそらくと睨んで、上に並べたように、最初の絵馬が二人して正月の初詣に来たついでに奉納されたもの、あとのがその後の奉納だとすれば、どうであろう。
ふたつの願文内容から言っても、奉納の前後関係に関する筆者の憶測は間違ってはいまい。
すると、二人は春日大社の神様にすっかり裏切られているのだ。
安くはない絵馬を購入し、奉納してお願いした日からほんの数日で、今年も税務調査が入ることが確定したのである。
お二人からすれば、頼りないこと夥しい神様である。
そして、貴子クンのほうは、お願いのし甲斐のない神様だと怒りまくっても、信心深い真寿美クンのほうは、せめて税務署の調査に手心を加えてもらうようにと、ひとりで再度のお願いに来たのである。
春日大社の祭神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)その他の神様は、いささか旧聞かも知れないが、世界遺産認定の慶事に鑑みて、もう少し二人の願いを聞いてやってもよかったのではないか。
第九十一講 目 次 第九十三講