朝日放送内定
遠部佳春
[大阪市 豊国神社]
これだけでは何のことか判らない。
就活、ご苦労様です、就職戦線も大変そうですね、というだけのことだ。
日本一の出世頭とも言うべき、豊臣秀吉を祭る豊国神社らしい願掛けだという他ない。
だが、この、大阪都心のビジネス街、官庁街も近い立地にある豊国神社には、というか就職祈願の願文にはこの手の文章が多いのである。
たとえば、これも豊国神社だが。
NHKに就職
内定祈願
山科里香
[大阪市 豊国神社]
このお二人、遠部クンと山科さんは、内定をもらうだけでよいのだろうか。
内定さえもらえば、本採用決定はどうでもよいのか。内定をいくらもらったか、その数だけが問題なのか。
もちろん、そんなことはあるまい。願いは、NHKやら朝日放送やらに、就職することのはずだ。
ならば、なぜすっきりと明確に、最終目標である「就職祈願」と書かないのだろうか。
この二人に限らず、多くの就活者が「内定」「内定」と繰り返している願文をよく見るのだ。
要するに、こうした就活戦士の諸君は、その過酷な戦いに疲れ果て、半ば思考停止状態になっていて、とりあえずの到達点である「内定」にしか考えが及ばなくなっているのだろうか。
そうではなく、こうした就活戦士の諸君は、大学受験生と同じで、とりあえず多くの選択肢、もちろん後は自分で決定できる選択肢を確保しておきたいのであろう。
つまり受験生にとって入試合格は、即入学ではなく、その権利の獲得であって、就職における内定も同じ意味を持つのだろう。
しかし、このお二人に限って言えば、朝日放送やらNHKやらと言えば、言葉を大切にして然るべき職場だし、有名どころに就職できればどこでもいいというような職場でもないだろう。
もちろん、このお二人が記者志望だとは限らないが、少なくとも、その程度の認識や良識、矜持は持ちあわせて欲しいと思うのは、筆者の時代錯誤だろうか。