[願いごと]
石女に合格できますように。
南半田町×××
浅野 聖子
[石巻市 羽黒山鳥屋神社]
まったく本講座の趣旨とは関係ないのであるが、ちょっと気になったので採集してみた。
「石女」というのは、今や完璧な差別用語と言ってよいだろう。
「うまずめ」と読んで、「子を生めない女」のことである。
広辞苑が、
「北の政所にておはしましけれど、つひに石女にて、御子の出来ざりければ」
と、古典・愚管抄の一節を用例として示している通り、昔から、不妊に苦しむ女性は多く、また女性の不妊をめぐってはアレヤコレヤの騒ぎも起きて来たのである。
昨今は、日本婦人科学会なぞを中心に、いわゆる不妊治療がどこまで許されるかなど、なかなか議論も白熱している(後日の注:今は不妊治療は相当なレベルまで進んでいるようである)。
もちろん、ここで聖子クンが合格祈願している「石女」は、石巻女子高校か何かのことであろう。
それは理解できるし、地元ならそういう略し方もあり、なのかも知れない。
しかし、行きずりの者は「石女」という字面を見て、ちょっとドキッとした次第である。
地元の、若い世代はともかく、長老連なぞはこういう略称に対して難を言い立てることはないのであろうか。
当の「石女」も、私立のお嬢さん学校か何かだと、こういう言い方に神経を尖らしていそうな気もするが…。
そのつもりで捜索してみると、
[願いごと]
石巻女子高校に合格!
浜通町×××
栗本蓉子
[石巻市 羽黒山鳥屋神社]
というのが、聖子クンの絵馬のすぐそばにあった。
石巻女子高校を略さずに、「できますように」のほうを略してある。
けだし、正解であろう。
こちらは中学生とは思えないほどの達筆であったから、ひょっとすると母親の代筆かも知れない。
あるいは、そういう大人びた文字が書けるだけに、蓉子クンは文字の意味にも敏感だということか。
まあ、余計な詮索ではあるが。