結婚二年
目を八月八日で
むかえます。
今結婚から
離婚に向かって
ます。どうかこれ
からも二人で頑張
って行きたいです。
仲を元に戻して下
さい 以前のように
なりたいです。
7月23日
富本圭子
[新潟市 白山神社]
うーん。
圭子さんは、どうも非常に厳しい状況に立たされているようである。
事態の深刻さとは裏腹に
「結婚から離婚に向かってます」
など、ユーモラスな雰囲気も漂わせる願文であるが、もちろん、圭子さんご本人にとっては非常に辛いことである。その原因が奈辺にあるのか、この願文からは推し量る術もない訳であるが…。
8月8日で結婚2年目を迎えるというのは、普通に解釈すれば、その日が満2周年ということだろう。
その日から2年目に入る、という意味かも知れない。
ということは、結婚後2年、あるいはひょっとして1年もたたないうちに、ふたりの仲がおかしくなっている訳である。
ものの本によれば、と言うか、ネット上の情報だが、我が国では今、結婚後5年未満の離婚というものが急激に増えているのだそうだ。
少々、薀蓄を傾けると、2001年の離婚件数は28万5千件で過去最高、そのうちの10万2千件が5年未満離婚だという。
事情通の話では、要するに仕事と家庭とか、子育てとか家事とかで、まるで価値観が違う男女が、そのあたりを確かめる間もないまま結婚し、いっしょに生活するようになるや、たちまち価値観の相違が露呈して、破綻に至るケースが多いそうである。
不幸にも、圭子さん夫婦も、そのようなケースのひとつになりかねない雲行きである。
先ほど、ユーモラスな雰囲気も漂うと書いたが、じっくり読めば悲痛な叫びと言えるものも見て取れる願文である。最後の「なりたいです。」など、書き込むスペースがなくなって、細い字でギリギリ余白に書いてある。
また、この文面からは、圭子さんご自身がたいへん真面目な性格のようにも感じられる。
新潟の総鎮守・白山神社の神様は、何でも加賀白山権現の女神で、縁結びにご利益がある神様だそうである。
境内には、立派な結婚式場なども整備して、この方面でしっかりと稼いでもいる。
「富本夫婦は、うちで式を挙げたんじゃないだろう」
「一度、挙式済みだから、あとは知らないぞ」
またもし、圭子さんがこの白山神社で挙式したのなら、
「最後まで、ちゃんと責任持ってください。」
と神様に迫るべき…、かどうかは、筆者には判断できない。
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