次のシーズンも
魚完・岩魚・鱒
が、たくさん
釣れますように。
家内安全
平成十五年十一月一日
橿原市 安藤 保
[橿原市 久米寺]
2行目の「魚完」というのは、Web用には文字がないようなので、苦肉の策として、本来ひとつの文字であったのをふたつに分けて表現したものである。
つまり、「魚」篇に「完」である。
受講生(あなた方のことである)諸氏は、何と読むかご存知だろうか?
実は筆者も、読み方がわからなかった。
調べてみると、アメノウオ、と読むようである。
別名、アマゴとも言う。
それはともかく、このアメノウオをはじめ、イワナ、マスと、すべて漢字で書くところなど、この願主がいかに渓流釣に入れ込んでいるか、渓流釣歴が長いかを、表していると言えよう。
安藤サン自身、「次のシーズンも」と言っている。
誠に結構な趣味であって、そのこと自体、何の差し障りもない。何の変哲もない、趣味の願文として「ハイ、次!」となってもおかしくない。
しかし、だ。
かりにも、ここは寺である。
よくは知らないが、仏道のほうには不殺生戒というものもあるらしいし、ご宗旨によっては、出家者が肉だの魚だのを食らうことも禁じているとか、いないとか。
少なくとも、無闇に生き物を殺戮することが歓迎されるはずはないのである。
そういう、お寺に来て、魚をたくさん釣らせてくれとお願いすることには、少々無理があるとは言えまいか。
しかも、その一方で、ちゃっかりと「家内安全」もお願いする。
それはあまりに手前勝手というものではないのか、安藤サン。アマゴ一家の家内安全はどうしてくれるのだ?
もっとも、この久米寺なる寺院にゆかりの仙人は、天空を飛翔している時、地上で洗濯をしていた女人の脛だか腿だかを見て目がくらみ、神通力を失って地上に落下したという不肖の術者だというから、まあ、それほど固いことも言うまいが。
南無阿弥陀仏。